夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

グレート・ギャッツビー 第八章

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-12

グレート・ギャッツビー 第八章-12 2時になると、ギャッツビーは水着に着替え、誰かが電話をかけてきたらプールにいる彼まで知らせるようにと、執事に頼んだでおいた。夏の間、ゲストを楽しませてくれた空気圧式のマットレスを取りに車庫に立ち寄って、運転…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-11

グレート・ギャッツビー 第八章-11 後ろに立っていたミケリスは、夜明けとともにはっきりしてきた、色あせて巨大なT.J.エックルバーグ先生の目を、彼が見ているのに気がついて愕然とした。 「神はすべてをご存知だ」とウィルソンは繰り返した。 「あれはただ…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-10

グレート・ギャッツビー 第八章-10 「そしてあの野郎が彼女を殺したんだ」とウィルソンが言った。突然、その口がポカンと開いた。 「誰がやったんだって?」 「それを見つける方法があるぞ」 「お前さんはすっかりまいってるんだよ、ジョージ」友人が言った…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-9

グレート・ギャッツビー 第八章-9 「結婚してどのくらいになるんだい? おい、ジョージ、ちょっとじっとして オレの質問に答えなよ。 結婚してどのくらいになるんだい?」 「12年だ」 「子供は?ジョージ、じっとしてて。聞いてるんだ。子供はいたのかい?」…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-8

グレート・ギャッツビー 第八章-8 この日の朝、電車の中で灰燼を通り過ぎた時、わざと車室の反対側の席に移った。オレは想像してた。そこには一日中野次馬の人だかりができていて、わんぱく坊主たちは埃の中に黒い塊を探していて、お喋りな男が何度も何度も…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-7

グレート・ギャッツビー 第八章-7 「ヤツらはみんな腐ってる」オレは芝生の向こうから叫んだ 。「君にはアイツら全部を集めただけの価値があるんだ」 そう言っておいて本当に良かったといつも思ってる。それが彼に向かって言った唯一の褒め言葉だったんだ。…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-6

グレート・ギャッツビー 第八章-6 線路が曲がり、太陽から離れていった。太陽が沈んでいくにつれ、彼女が息を吹き込み、今は視界から消えようとしている街に、祝福を与えているように見えた。彼は必死に手を伸ばして、彼女がいたからこそ美しかった街の片鱗…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-5

グレート・ギャッツビー 第八章-5 「彼女があの人を一度だって愛したとは思えないんだ」 ギャッツビーは窓から振り向いて、挑みかかる様にオレを見た。 「ね、覚えてるでしょう、君。今日の午後、彼女はとても興奮してた。あの人は彼女を怖がらせるような言…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-4

グレート・ギャッツビー 第八章-4 彼は戦争で並外れた活躍をした。前線に出る前は大尉で、アルゴンヌの戦いの後は少佐に昇進し、師団直属の機関銃隊の指揮をとった。休戦後、彼は必死で帰国しようとしたが、複雑な事情やら誤解やらで、代わりにオックスフォ…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-3

グレート・ギャッツビー 第八章-3 「自分が彼女を愛していると知ってどれだけ驚いたか、言葉では言い表せないほどだよ、君。しばらくは彼女にフラれる事を期待していたんだが、彼女はそうしなかった。彼女も僕を愛してくれていたからね。彼女は僕が物知りだ…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-2

グレート・ギャッツビー 第八章-2 彼女は彼が知った初めての「上流階級の」女の子だった。彼は様々な手を使って素性を隠しながらそのような人々と接触してはきたが、いつもそのような連中とは見えない有刺鉄線で隔てられている様に感じていた。デイジーは興…

グレート・ギャッツビー 対訳 第八章-1

グレート・ギャッツビー 第八章-1 オレは一晩中眠ることができなかった。霧笛が絶え間なく海峡の上でうめき声をあげ、グロテスクな現実と野蛮で恐ろしい夢の間で半病人のように翻弄され続けた。夜が明ける頃に、タクシーがギャッツビーの車道に入る音が聞こ…