夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

ポリアンナ 第31章 新しいおじさん

ポリアンナが天井に映る色とりどりの影が躍るのを見ていたとき、ウォレン先生が病室に入ってきました。そして、その後ろには、背の高い肩幅の広い男性がいたのです。
「チルトン先生!ああ、チルトン先生、お会いできるなんて、ほんとにうれしいわ!」ポリアンナは叫びました。喜びの声がはじけたとき、急に赤くなって涙をこぼしている人がいました。
「でも、もちろん、ポリーおば様は、うれしくない・・・」
「いい子ね、大丈夫なの、心配しないで」ポリーはなだめるようにいって、急いで付け加えました。
「チルトン先生には、わたしから・・・今朝、ウォレン先生と一緒に来ていただきたいって・・・いいました」
「ああ、おば様が、先生に来てもらうようにいわれたのね」ポリアンナは満足そうにつぶやきました。
「そうよ、いい子ね。わたしが頼んだの。それは・・・」でも、もう手遅れでした。チルトン先生の目は幸福で輝いていたのが明らかでしたし、ポリーはその顔を見てしまったのでした。ほおをばら色にそめて、急いで部屋を出て行ってしまいました。
窓際ではウォレン医師と看護婦が深刻そうに話し合っていました。
チルトン先生は両手をポリアンナに差し出していいました。
「お嬢さん、今日は、君がこれまでやってきた中で、一番喜ばしいことをやってくれたって思うんだよ」チルトンの声は感情の高まりで震えていました。
夕方、喜びに震えて別人のようなポリーが、ポリアンナのベッドの脇にやってきました。看護婦は夕食で席をはずしており、二人きりでした。
ポリアンナ、わたしのいい子、聞いて欲しいことがあるの。いつか、チルトン先生が・・・あなたのおじさんになるわ。そうなったのは、あなたのおかげなの。ああ、ポリアンナ、わたしは、本当に・・・幸せよ!そしてうれしいわ!」
ポリアンナは手をたたこうとしました。でも、手を合わせたところで、生まれて初めて、途中でやめてしまいました。
「ポリーおば様、もしかして、おば様が、先生の長い間求めていた手と心の持ち主だったの?おば様、そうなのね・・・そうだと思ったわ!だから、先生は、今日、わたしが一番喜ばしいことをやったんだっていったのね。うれしいわ!おば様、今は、わたしの足がどうなったって、うれしいわ!」
ポリーは泣きそうになるのをこらえました。
「いい子ね、きっといつかはね・・・」
でも、おば様は最後までいいませんでした。ポリーは、チルトン医師から聞かされた希望をいいたくてたまらなかったのでした。でも、ポリアンナにとってはいいニュースであり、確かであることだけいいました。
ポリアンナ、来週、旅行をすることになりますよ。小さな居心地のいいベッドに横になったまま車に乗って、ここから何マイルも離れたところの大きな家に住んでいる立派なお医者様に会いに行くんですよ。その先生はあなたのような人を何人も診ていらっしゃいます。先生は、チルトン先生ととっても仲のいいお友達で、あなたのために新しい治療をしてくださるんですよ!」