グレート・ギャッツビー 第七章
グレート・ギャッツビー 第七章-26 「体が大きく裂けてたよ」 「そんな事言わないでくれよ、君」彼は身震いした。 「とにかく・・・・デイジーがアクセルを踏んでしまったんです。彼女を停めさせようとしたんだが停まらなかった。だから、僕は非常用ブレーキ…
グレート・ギャッツビー 第七章-25 「脇道を通ってウェストエッグに着いたんです。車を車庫に置いてきました。誰にも見られていないと思いますが、確信はありません」 コイツのことが虫唾が走るほど嫌いになっていたんで、間違っているという気にもならなか…
グレート・ギャッツビー 第七章-24 もし家の中に入るとしたら、オレは大マヌケだぜ。この一日でみんなに飽き飽きしたんだって。もう十分だ。その中にはジョーダンも入ってた。彼女はオレの表情に何かを感じとったんだろう。不意に背中を向けて玄関の階段を駆…
グレート・ギャッツビー 第七章-23 ブキャナン邸が、暗いざわめきのある木々の間から、不意にオレたちの方に姿を現した。トムは玄関の脇に車を停め、蔦の葉の間から二つの窓の灯りが華やかに漏れている二階を見上げた。 「デイジーが家にいる」と彼が言った…
グレート・ギャッツビー 第七章-22 肌色の淡い身なりの整った黒人が近づいてきて言った。 「黄色い車だった。大きな黄色い車だったさね。新しい」 「事故を見たのか?」警官が尋ねた。 「いいや。40マイルかもっと出しててすれ違ったさ。50か60だったかもし…
グレート・ギャッツビー 第七章-21 まだ少し離れているところから、数台の自動車と人だかりが見えてきた。 「事故だな! 良かったな。これでウィルソンも修理仕事ができそうじゃないか」 トムはスピードを落としたが、停まる気はなかった。でもガレージのドア…
グレート・ギャッツビー 第七章-20 トムとクーペに乗り込み、ロングアイランドに向けて出発したのは午後7時のことだった。トムは興奮して笑いながらひっきりなしに話していたが、その声は、歩道の見知らぬ人の話し声や高架の喧騒のように、ジョーダンとオレ…
グレート・ギャッツビー 第七章-19 その表情が通り過ぎると、勢い込んでデイジーに話し始めた。すべての汚名を否定し、言われていない非難まであげて自分の名誉を挽回しようとした。でも、いくら言っても、彼女はますます内にこもっていくばかりで、とうとう…
グレート・ギャッツビー 第七章-18 「お前の『ドラッグストア』が何か知ってるんだぞ」彼はオレたちの方を向いて早口で話し出した。 「こいつとウルフシェイムは ここいらとシカゴの路上ドラッグストアを買い占めて 穀物製アルコールを カウンターで売ってい…
グレート・ギャッツビー 第七章-17 「ああ、あなたはあまりにも沢山のことを望みすぎなのよ!」ギャッツビーに向かって叫んだ。「今はあなたを愛しているの。それだけで十分じゃない?過去はどうしようもないんだもの」彼女は力なくすすり泣き始めた。 「前…
グレート・ギャッツビー 第七章-16 「あなたこそ混乱してるじゃない」デイジーが言って、オレの方を向いた。ゾッとするような軽蔑を込めて1オクターブ下げた声が部屋中を満たした。「わたし達がシカゴを離れた理由を知ってる?あの大騒ぎを聞かなかったとし…
グレート・ギャッツビー 第七章-15 「座りなさい、デイジー」トムは父親のようにしゃべろうとしたが上手くいかなかった。 「何があったんだ。オレは全部聞きたい」 「何があったかは今お話ししたとおりです」ギャッツビー が言った。「5年間の親交がありまし…
グレート・ギャッツビー 第七章-14 「落ち着けだって!」トムは信じられないと言うように繰り返した。「最近は、どこからともなく来た誰でもないヤツに奥さんを寝取られるってのが流行ってるようだな? ヘン、それがいいって言うんなら、オレは手を引くさ。.…
グレート・ギャッツビー 第七章-13 「彼はたぶん誰かにたかりながら帰って行ったのね。イェール大学ではあなたのクラスの級長だったと言ってたわよ」 トムとオレは顔を見合わせた。 「ビロクシが?」 「第一に、級長なんてもんは無かったよ...」 ギャッツビ…
グレート・ギャッツビー 第七章-12 トムが受話器を取り上げると、圧縮された熱が音になって爆発し、下の舞踏室からメンデルスゾーンの結婚行進曲の威勢の良い和音が聞こえてきた。 「この暑い中に誰かと結婚するなんて!」ジョーダンが無愛想に叫んだ。 「で…
グレート・ギャッツビー 第七章-11 「素晴らしいスイートね」とジョーダンがうっとりとささやき、誰もが笑った。 「別の窓を開けて」とデイジーが鏡から振り向くことなく命令した。 「もうこれ以上は無いよ」 「じゃあ斧を持ってきてもらうよう電話して...」…
グレート・ギャッツビー 第七章-10 単純な心に起きた混乱ほどやっかいなものはない。車を走らせている間、トムは熱い焦燥の鞭が当たるのを感じていた。妻と愛人は1時間前までは安泰だったのに、今や彼の手元から滑り落ちようとしていた。デイジーに追いつき…
グレート・ギャッツビー 第七章-9 クーペが埃を舞い上げて、振った手が見えたかと思うとあっという間にオレたちの横を通り過ぎていった。 「いくらになるんだ?」イライラしてトムが聞いた。 「この2日間、おかしなことに気づいたんです」ウィルソンは言った…
グレート・ギャッツビー 第七章-8 オレたちは皆、エールの酔いが覚めてイライラしていたので、それを承知でしばらく黙って車を走らせていた。そして、T.J.エックルバーグ先生の色あせた目が道のかなたに見えてきたとき、オレはギャッツビーの「ガソリンにつ…
グレート・ギャッツビー 第七章-7 「僕の車で行きますか?」とギャッツビーが提案した。シートの熱い緑の革に触れて 「日陰に置いておけばよかった」と言った。 「標準シフトなのか?」とトムは尋ねた 「そうです」 「君はオレのクーペで行けばいい。オレは…
グレート・ギャッツビー 第七章-6 「さあ!」 トムがキレそうになった。 「どうしたんだ?街に行くんなら、さっさと行こう」 彼の手は震えていたが、なんとかエールの最後の一口を唇に持っていった。デイジーの声に、オレたちは立ち上がって燃える砂利道に出…
グレート・ギャッツビー 第七章-5 オレたちの目は、バラの花壇や熱い芝生、そして海岸沿いに打ち上げられた海藻に向けられた。船の白い帆がゆっくりと青く冷たい空を背景に移動していた。前方には貝のように広がる海と、美しい島々が点在していた。 「楽しそ…
グレート・ギャッツビー 第七章-4 「お昼ごはんの前にお洋服を着替えたの」と子供がデイジーに振り返って熱心に言った。 「ママが皆さんにあなたを見ていただきたかったからなの」そう言ってデイジーは、白い小さな首筋に顔をよせた。「かわいいわたしの夢。…
グレート・ギャッツビー 第七章-3 ギャッツビーは真紅のカーペットの中央に立ち、うっとりと辺りを見つめていた。デイジーが彼を見て、甘く刺激的な笑い声をたてると、胸元からかすかにパウダーが舞い上がった。 「噂によると」 ジョーダンがささやいた。「…
グレート・ギャッツビー 第七章-2 次の日は、その夏最後の一番暑い日だった。列車がトンネルを抜けて陽光の中に出てくると、ナショナル・ビスケット社(ナビスコ)の正午を知らせる熱い汽笛だけが、煮えたぎる静けさを引き裂いた。列車の麦わらの座席カバーは…
グレート・ギャッツビー 第七章-1 ギャッツビーへの好奇心が大きくふくらんでいた頃、土曜日の晩なのに、彼の家の明かりが灯らなかった。始まりがはっきりしないのと同じく、彼のトリマルキオ(下劣な手を使って財を築いた架空のローマ時代の富豪)としてのキ…