グレート・ギャッツビー 第五章
グレート・ギャッツビー 第五章-11 サロンでギャッツビーはピアノの横にある小さなランプをつけた。震えるマッチでデイジーのタバコに火をつけ、部屋の反対側にあるソファにデイジーと一緒に腰かけた。きらめく床に反射する光を除けば、なんの光も届かなかっ…
グレート・ギャッツビー 第五章-10 「早く来て!」と窓辺でデイジーが叫んでいた。 雨はまだ降っていたけど、暗闇が西に広がり、海の上にはピンクと金色の泡のような雲が広がっていた。 「あれを見て」と彼女はささやき、しばらくしてから 「ピンクの雲に乗…
グレート・ギャッツビー 第五章-9 家を見た後は、運動場、プール、高速ボートや真夏の花々を見ることになっていたが、窓の外ではまた雨が降り出したので、みんなで窓際に立って湾に波立つ水面を見ていた。 「霧がなければ、湾の向こうに君の家が見えたのに」…
グレート・ギャッツビー 第五章-8 彼は片時もデイジーから目を離さなかったし、家の中のすべてのものを、彼女の愛らしい目が示す反応具合で再評価していたと思う。時々、彼女がそばにいる現実を前にして、それ以外が現実ではないかのようにぼんやりと自分の…
グレート・ギャッツビー 第五章-7 「ええ、いろんな仕事をしてきましたよ」 言い直してきた。 「薬の仕事もしたし、石油の仕事もしたし。でも今はどっちもやってないんです」 まじまじとオレを見た。 「先日の夜に提案したことを考えてもらえたんですか?」 …
グレート・ギャッツビー 第五章-6 オレは中に入った。入る前に、コンロをひっくり返さないように、台所で可能な限りの音を立ててみた。でも、二人には聞こえなかったんだろう。ソファの両端に座って、質問しているのか考え中なのか、お互いを見つめ合ってい…
グレート・ギャッツビー 第五章-5 オレは裏口から外に出た。緊張に耐えられず、30分ほど前に家を出て、家の周りを一周していたギャッツビーのように。豊かな葉っぱが雨避けになってくれる黒い節のある木まで走ってみた。雨が激しくなり、ギャッツビーの庭師…
グレート・ギャッツビー 第五章-4 ポケットに手を突っ込んだままでいるギャッツビーは、ムリして落ち着いてるように、あるいは退屈そうに見せながら、マントルピースに寄りかかってた。マントルピースにある止まったままの時計に当たるほど頭を反らせ、傍目…
グレート・ギャッツビー 第五章-3 無理強されたみたいに力なく椅子に倒れこんだ時、車の車道に乗り入れる音がして、オレたち二人は飛び上がった。胸をドキドキさせながら庭に出てみた。 雨滴が滴る、花のないライラックの木の下をくぐって、大きなオープンカ…
グレート・ギャッツビー 第五章-2 約束の日はひどい雨が降っていた。11時になると、レインコートを着た男が芝刈り機を引きずってきて玄関を叩き、ギャッツビー氏が草刈りに来させたと告げた。その時、朝仕事を終えたフィンランド人の家政婦に、後で戻ってく…
グレート・ギャッツビー 第五章-1 その夜、ウェストエッグに戻った時、一瞬、自分の家が火事になったのではと心配になった。2時だというのに、半島の一角が光に包まれ、低木の上に信じられないほどの光が降り注ぎ、道端の電線までもが光ってた。角を曲がると…