夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

少女ポリアンナ 第32章 ポリアンナからの手紙

ポリーおば様とトムおじ様へ

ああ、わたしは・・・わたしは、歩けるのよ!今日、ベッドから窓まで歩けました!6歩でした。でも、自分の足で歩けるなんて、なんて気持ちいいんでしょう!
お医者様たちはみんな立ってニコニコしていて、看護婦さんたちはそばで泣いていました。隣の病室にいる、先週歩き出した女の人はドアから見ていました。来月歩けるようになると願っている患者さんにも、見てもらいました。その人は、わたしの部屋の看護婦用のベッドの上に寝て、手をたたいていました。床掃除をしているブラック・ティリーも、ホールの窓からのぞいていて、泣き止むと「かわいい子、お嬢さん」と声をかけてくれました。
みんながなぜ泣くのかわからないわ。わたしは、歌って、大声を出して、叫びたい気持ちです。ああ、ああ、想像してみてください、わたしは、歩けるんです、歩けるんです、歩けるんです!もう、ここに10ヶ月もいたことは気にならなくなりました。それに、結婚式にも参加できたし。ここまで来てくださって、わたしに見えるようにって、ベッドの脇で結婚式をあげてくださったのは、ポリーおば様らしいわ。いつもわたしが喜ぶことを考えてくださるんですもの。
もうすぐ、家に帰れるそうです。わたしは、ここからまっすぐ歩いて帰りたいような気持ちです。これから、乗り物に乗りたいなんて思わないでしょう。自分の足で歩けるってことは、なんてすてきなことなのかしら。ああ、ほんとに、うれしいわ!なんだって、うれしいわ。今は、少しの間、歩けなくなったこともうれしいわ。だって、これまで自分の足がどんなにすてきだったかなんて、なくなってしまうまで、気づかなかったんですもの。明日は、8歩、歩きます。

みんなに、たくさんの愛をこめて
ポリアンナ