夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 VI-1


あぁ、ちいさなおうじさま!おさないきみのなぞが、すこしずつとけてきた。ながいあいだ、おだやかなゆうひをみるのがたったひとつのたのしみだったんだね。


よっかめのあさ、きみがこういったとき、あたらしいことがわかった。
「ゆうひをみるのがだいすきなんだ。さあ、ゆうひをみにいこうよ」
「だけど、まだまたなくちゃ」とぼくがこたえた。
「なにをまつの?」
「ゆうぐれだよ。じかんがくるまでまたなくちゃいけないだろ」


さいしょ、きみはとてもびっくりしたようだった。でもわらってこういったね。
「つい、じぶんのいえにいるようなきがしてた」
そうなんだ。アメリカがまひるのときは、フランスではゆうぐれどきだってことはだれだってしっている。

もし、フランスまでひっととびでとべるんなら、いっきにゆうぐれにたどりつけるんだけど、あいにくフランスはとおすぎる。でもおうじさまがすむちいさなほしでなら、イスをちょっとうごかすだけで、ゆうひがしずむのをいつでもみることができるんだ。


きみはいった。
「あるときなんか、いちにちにゆうやけを44かいもみたよ!」
そしてしばらくしてこうつけくわえたね。
「かなしいときは、だれでもゆうやけがみたくなる・・・」
「じゃあ、きみは、かなしかったの?ゆうやけを44かいみたとき?」
おうじさまはなにもいわなかった。