夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 XII-1

つぎのほしは、よっぱらいのほしだった。そこにいたじかんはみじかかったけど、ちいさなおうじさまは、とてもかなしくおもった。

「そこでなにをしているんですか?」
あきビンとあいていないビンのれつをまえに、すわっているよっぱらいに、おうじさまはきいた。
「さけをのんでいるのさ」よっぱらいはかなしげなようすでこたえた。
「なんでのんでなんかいるんですか?」おうじさまは、さらにたずねた。
「わすれるためだよ」よっぱらいはこたえた。
「わすれたいって、なにをですか?」きのどくにおもって、おうじさまはききかえした。

「はずかしいことをわすれるためにさ」よっぱらいは、うなだれてうちあけた。
「はずかしいことってなんですか?」どうにかして、たすけたいとおもって、おうじさまはたずねた。
「のんでいることが、はずかしいのさ!」よっぱらいは、こたえるやいなや、じぶんのからにとじこもったまま、だまりこんでしまった。


おうじさまは、よわりきってそこをたちさった。
「おとなは、ほんとにほんとにとってもへんだよ」とつぶやきながら、さらにたびをつづけた。