夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 XX-1

それから、すなといわとゆきのあいだを、ずいぶんながらくあるいて、やっとちいさなおうじさまは、みちにでた。みちはぜんぶ、ひとのすむところにつながっている。

「こんにちは」とおうじさまはいった。
いちめんに、バラのはながさいている、にわのまえにでた。
「こんにちは」とバラがいった。
おうじさまは、たくさんのはなを、じっとみつめた。みんな、じぶんのはなにそっくりだった。
おどろいたのできいてみた。
「あなたたちは、どなたですか?」
「わたしたちは、バラですよ」バラはいった。
おうじさまは、かなしくなった。あのはなは、うちゅうでたったひとつしかない「はな」といっていたのに、このはなぞのには5せんぼんものバラがさいているではないか!
「あのはながみたら、とてもかなしがるだろうな」とひとりごとをいった。
「もしこれをみたら・・・ひどくせきをして、わらわれたくないものだから、しんでしまうふりをするよ。そしたら、ぼくはたすけてあげなくちゃいけない。そうしなければわるいきがするし、あのはなだって、ほんとうに、しんでしまうかもしれないもの」

それから、もういちどかんがえてみた。
「ぼくは、ものもちだとおもってた。せかいに、ひとつしかないはなが、あるって。でも、あるのは、ただのバラだったんだ。ふつうのバラ。3つあるかざんは、ぼくのひざぐらいまでしかないし、そのうちのひとつは、もう、ひがつかないかもしれないし。それじゃあ、ほんとにりっぱなおうじさまとはいえないじゃないか・・・」

それからくさのうえにつっぷしてないたのだった。