夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 XXVI-2

そのばん、おうじさまが、でかけていったのにきづかなかった。だまっていってしまったのだ。
やっとおいついたとき、おうじさまは、ひとりでしっかりしたあしどりであるいていた。


「あぁ!きたんだ・・・」
おうじさまは、ぼくのてをとって、こまったようなかおをした。
「きちゃいけなかったのに。きっとかなしむよ。ぼくがしんだようにみえるよ。でも、そうじゃないんだ・・・」
ぼくは、なにもいわなかった。
「わかってよ・・・とおすぎるんだよ。からだをもっていけないんだ。おもすぎて」
ぼくは、なにもいわなかった。
「ただのぬけがらみたいなもんだよ。ぬけがらなんて、なんにもかなしくないよ・・・」
ぼくは、なにもいわなかった。
おうじさまは、ためらったようだけど、おもいきったように、もうひとこといいそえた。
「すごいんだよ、わかるよね。ぼくも、ほしをみあげる。ほしはみんな、さびついたベルトぐるまのある、いどみたいだよ。そして、みんなぼくに、きれいなみずをくれるんだ」
ぼくはなにもいわなかった。
「それって、すてきでしょ。あなたには、ちいさなベルが5おくあるんだ。ぼくには、きれいなみずのいどが5おくあるんだ・・・」
それからおうじさまはもうなにもいわなかった。ないていたから・・・
「ここだよ。ここからはひとりでいかせて」