夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

ベンジャミン・バトン 前置詞のお勉強

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前置詞って苦手なんですよね。みなさんはいかがですか。

でも、とっても大事で、これが間違っているとせっかくがんばって書いた英語の文章の出来が一気に下がってしまいます。おまけに間違っていることに気づきにくい。。。

 

ということで、今回は、ベンジャミン・バトンの原文に出てくる気になる前置詞を拾い、解説を試みました。みなさまの英語力を一段上げるためのご参考になれば幸いです。それに、英文を読む場合、前置詞に気を使われて読まれると、英語力が上がります。

 

それでは行ってみましょう!

 

前書きから

I discovered an almost identical plot in Samuel Butler's "Note-books.”

 

ここでの前置詞はinで、onでもatでもありません。

これはonatが、その指し示している場所のどんぴしゃりを意味するのに対し、inだと少し大きな広がりの中にあるというニュアンスが出ます。つまり、Samuel Butler's "Note-books”という作品全体の中の一文または一フレーズが、自分が思っていたものだったというニュアンスが出ます。ですから、この場合はin が正解なんです。

 

例えば、「この本の中に自分が探している文章を見つけた」を英語に訳すとこうなります。

 

I just found the text I was looking for in this book.

 

もちろんinを使います。

 

 

前書きの続きにこうあります。

 

The story was published in "Collier's" last summer .

 

これは、この物語がコリアーズという雑誌に昨年の夏に掲載されたという意味ですが、ここでも同じようにinが使われています。

 

同じin関連で前書きの中にこういう文章があります。

 

(The story) provoked this startling letter from an anonymous admirer in Cincinnati: 

 

 

Cincinnatiは都市の名前だそうです。市も大きいんで、そこに住んでいるということは、英語ネイティブは「都市という空間の中に住んでいる」と解釈するので、前置詞はinですね。これは軽くクリアでしょう。

 

さて、作者は読者からものすごい皮肉を込めた手紙をもらいます。その締めくくりにこうあります。

 

 

I hate to waste a peice of stationary on you but I will.

 

読んだだけでも、歯が痛くなりそうな文章です。

 

「貴方のために文房具を無駄にしたくはないのですが、筆を取りました」と訳しましたが、お前なんかのために紙やインクを無駄にしたくはないんだよという意味ですね。

 

ここではon you で、for you ではないのはなぜでしょうか?

forには、~に向かって、~のためにと、対象に対して向かっていくというニュアンスがあるのですが、onだと、何かに直接接しているというニュアンスで、forと違って対象に向かっていくというニュアンスはありません。ですから、onだと事務的な感じがするんです。

 

あと、「お前を見張っているぞ」という意味で使われる、「I'm gonna keep an eye on you」も思い起こさせます。

 

とにかく、すごく失礼な感じが出てますね。