夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

対訳 ベンジャミン・バトンの奇妙な実態 1-6 THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON

「落ち着きなさい!」キーン医師が鋭く言った。彼はやや苛立っているように見えた。

「子供は生まれたんですか?」とバトン氏は尋ねた。

キーン医師は顔をしかめた。「そうですね、一応そうですね」。彼は再びバトン氏に風変わりな視線を注いだ。

「妻は大丈夫ですか?」

「ええ」

「男の子ですか、女の子ですか?」

「さあ、どうぞ!」キーン医師は苛立ちをあらわにして言った。 「ご自分でご覧になってください。非道いもんだ!」彼は最後の言葉をほとんど一息でいいきると、顔を背けてつぶやいた。

「こんなことが起こるとわたしの職業上の評判はどうなりますか? もう一回起こってみなさい、身の破滅ですよ。誰だって破滅してしまいますよ」


Talk sense!” said Doctor Keene sharply. He appeared somewhat irritated.

“Is the child born?” begged Mr. Button.

Doctor Keene frowned. “Why, yes, I suppose so—after a fashion.” Again he threw a curious glance at Mr. Button.

“Is my wife all right?”

“Yes.”

“Is it a boy or a girl?”

“Here now!” cried Doctor Keene in a perfect passion of irritation, “I’ll ask you to go and see for yourself. Outrageous!” He snapped the last word out in almost one syllable, then he turned away muttering: “Do you imagine a case like this will help my professional reputation? One more would ruin me—ruin anybody.”

 


Talk sense!

「つじつまの合うことをしゃべりなさい」という意味。


after a fashion

一応できたが完璧ではないという意味。