夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 VIII-4

「わたしは、つまらないクサなんかじゃないわ」はなはかわいらしくこたえた。
「ごめんなさい・・・」
「トラがきてもだいじょうぶ。でも、よるのくうきのつめたさがこたえるの。かぜよけを、たててくださらない?」
「つめたいよるのくうきがこたえるって、まったくへんなはなだな」
おうじさまはちいさくひとりごとをいった。
「それに、ずいぶんわがままなんだから」
「よるになったら、ガラスのうつわをかぶせていただけないこと。ここはとてもさむいわ。わたしがうまれたところは・・・」

そこでしゃべるのをやめた。タネだったときにやってきたのだから、ほかのせかいをしっているはずがなかった。うっかりうそをついてしまって、はずかしくなって、なんどかせきをしてごまかそうとした。
「かぜよけは、いただけるのかしら?」
「さがしにいこうとしたけど、きみがはなしかけたから!」
そこで、はなはむりやりせきをして、おうじさまがきまりわるがるようにしむけるのだった。


おうじさまは、そのはながだいすきだったけど、だんだんしんじられなくなっていった。それに、たいしてだいじじゃないことまで、やってあげようとがんばっていたから、おもにになってきた。


「はなのいうことを、きいちゃいけなかった」
あるひ、おうじさまはぼくにいった。
「はなのいうことをきいていたら、ダメなんだ。ただながめて、においをかぐだけでよかった。ぼくのはなは、いいかおりでほしをみたしてくれた。でも、それほどうれしかったとはおもえない。あのはなが、トラのつめのことをもちだしたとき、かわいそうにとおもえばよかったんだけど、ただいらいらしただけだった」


それからまたいった。
「でも、ほんとうは、なんにもわかっちゃいなかったんだ!はながしてくれたことだけをみるべきで、いわれたことなんかで、きめつけちゃいけなかった。いいかおりでほしをみたしてくれて、うっとりしていたのに。にげだしちゃいけなかった・・・ばかばかしいおしばいのうしろにかくれている、かわいらしさをわかってあげなくちゃいけなかった。はなは、どうしておかしなことばかりいうんだろう!でも、ぼくはおさなすぎて、どうしてあげたらいいのかわからなかった」