夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 XIV-1

いつつめのほしは、とてもかわっていた。これまでみてきたなかで、いちばんちいさかった。あかりと、あかりとあかりとうばんで、もういっぱいになっていた。このうちゅうのなかで、だれもいない、いえもなんにもないほしに、なんであかりがあってあかりとうばんがいるのか、ちいさなおうじさまには、さっぱりわからなかった。それでも、おうじさまはこうつぶやいた。


「このひとも、どこかかわっているにちがいない。でも、おうさまや、うぬぼれやや、ビジネスマンや、よっぱらいほどわるくはないみたいだ。すくなくとも、このひとのしごとにはいみがあるよ。あかりをつければ、いのちがうまれて、はながさいたみたいになる。あかりをけせば、はなやほしをねむりにつかせるし。すてきなしごとじゃないか。すてきだからこそ、やくにたつ」

ほしにつくと、あかりとうばんに、そんけいのねんをこめてあいさつした。
「こんにちは。どうしていまあかりをけしたのですか?」
「めいれいだから」あかりとうばんはこたえた。「こんにちは」
「めいれいってどんなめいれいですか?」
「めいれいっていうのは、あかりをけせっていうことだ。こんばんは」
あかりとうばんは、あかりをつけた。
「あかりをけしたばかりなのに、どうしてつけるんですか」
「めいれいだから」あかりとうばんはこたえた。
「おっしゃるいみがわかりません」おうじさまはいった。
「いみがわかることなんてなにもないさ。めいれいは、めいれいさ。こんにちは」
そういって、あかりとうばんはあかりをけして、あかいチェックのハンカチでひたいをぬぐった。


「わしのしごとはひどいもんだ。むかしはまだよかった。あさ、あかりをつけて、よる、あかりをけせばよかった。そしていちにちじゅうゆっくりして、よるは、ねむればよかった」
「めいれいがかわったんですか」
「めいれいはかわっておらん、これはひげきだ!まいとし、まいとし、ほしは、どんどんはやくまわるようになったというのに、めいれいはかわっておらんのじゃよ!」あかりとうばんはいった。
「だから、どうなったんですか」おうじさまはたずねた。
「ほしがいっぷんごとにいっかいてんするんで、やすむひまがまったくなくなってしまった。いっぷんごとにあかりをつけて、またけさなくちゃならんのだよ」
「それっておかしいですね。あなたのほしでは、いちにちはたったのいっぷんなんですか!」
「おかしいことがあるものか!こんなにはなしているあいだに、もうひとつきがたってしまったじゃないか!」
「ひとつきですって?」
「いっかげつさ、30ぷんは30にち。こんばんは」
それから、あかりとうばんはまたあかりをつけた。


それをみながら、おうじさまは、めいれいにいっしょうけんめいしたがっている、あかりとうばんがすきになった。まえに、ゆうひがみたくて、イスをすこしずつひいていったことをおもいだして、そのひとをたすけたいとおもった。
「あのう、もしやすみたいとおもわれるのでしたら、いつでもやすめるほうほうをおしえますよ」
「いつだってやすみたいさ」あかりとうばんはこたえた。
まじめなひとだって、ときにはゆっくりしたいものだ。
おうじさまはせつめいした。
「あなたのほしはとてもちいさいから、3ぽ、おおまたであるけばいっしゅうすることができます。いつまでもひるまにいたかったら、ゆっくりあるけばいいんです。やすみたければ、またあるくんです。そうすれば、ひるのながさはあなたのおもうがままです」


「それじゃ、あまりやくにたたんな」あかりとうばんはいった。「いちばんすきなことは、ねることだから」
「それはがっかりですね」おうじさまはいった。
「まったくがっかりだよ。こんにちは」あかりとうばんはいった。そして、あかりをけした。
おうじさまは、ひとりごとをいいながら、さらにたびをつづけた。
「あのひとは、ほかのれんちゅうからばかにされてしまうだろう、おうさまや、うぬぼれやや、よっぱらいや、ビジネスマンに。それでも、あのひとだけは、まったくばかばかしいとはおもえなかった。たぶん、あのひとのしごとは、ほかのひとのためにも、なっているからだろう」


がっかりしてためいきをつきながら、こういった。
「ともだちになりたいとおもえたのは、あかりとうばんだけだった。でもあのほしはちいさすぎる。ふたりぶんのばしょさえもない・・・」


でも、おうじさまが、そのほしをはなれるのをとてもざんねんがった、ほんとのわけは、ゆうひをいちにちに1440かいもみられるすてきなほしだったからなんだ!