夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 XXII-1

「こんにちは」ちいさなおうじさまはいった。
「こんにちは」せんろこうかんしゅはこたえた。
「ここで、なにをなさっているんですか?」おうじさまはたずねた。
「りょこうしゃを、1000にんずつにわけているのさ」せんろこうかんしゅしはいった。「りょこうしゃをのせているれっしゃを、みぎにいかせたり、こんどはひだりにいかせたりね」


きらきらしたあかりをつけた、とっきゅうでんしゃがとおりかかって、かみなりのようなおとをたてて、せんろこうかんしゅのこやをゆらしていった。
「みんな、ものすごくいそいでるんですね」おうじさまはいった。「いったい、なにをさがしているんでしょう?」
「そんなこと、きかんしゃのうんてんしゅだって、しらないだろうさ」せんろこうかんしゅはいった。
また、きらきらしたあかりをつけた、にだいめのとっきゅうれっしゃが、はんたいのほうこうからとおりかかった。
「あのひとたちは、もうかえってきたんですか」おうじさまはきいた。
「あれは、べつのれっしゃだよ」せんろこうかんしゅはいった。「こうかんしゃだ」
「ひとって、じぶんのいるところが、すきになれないんですか?」おうじさまはたずねた。
「じぶんのいるところが、きにいっているひとは、なかなかいないだろうね」せんろこうかんしゅはこたえた。


そして、さんだいめのとっきゅうれんしゃの、かみなりのようなおとが、きこえてきた。
「あのひとたちは、さいしょにいったひとたちを、おいかけているんですか?」おうじさまは、ねっしんにたずねた。
「あのひとたちは、だれもおいかけたりはせんよ。ねているか、ねていなければ、あくびをしているかの、どちらかだよ。こどもたちだけが、まどにはなをおしつけてみているのさ」


「こどもたちだけが、なにをさがしているか、しっているんだ」おうじさまはいった。
「ぬのきれにんぎょうといっしょにすごしたじかんが、そのにんぎょうを、とくべつなものにしてくれる。だから、だれかに、にんぎょうをとられたりしたら、こどもたちはなくんだ・・・」
「こどもたちはしあわせだな」せんろこうかんしゅは、いうのだった。