夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

星の王子さま ブログで読める新訳 X-1

ちいさなおうじさまは、ちかくにあるほし、325,326,327,328,329そして330にいってみた。あたらしいことを、まなぶためだ。


さいしょにいったほしは、王さまがすんでいた。ゆうがなむらさきのおりものと、しろいけがわにつつまれて、おちついておごそかなぎょくざについていた。


「おう、これはけらいじゃな」
おうじさまがやってくるのをみて、おうさまいった。
「おあいするのは、はじめてなのに、どうしてぼくのことがわかるんですか」
おうじさまはきいてみた。
おうさまにとって、せかいはたんじゅんだってことをしらなかった。おうさまには、にんげんなんて、みんなけらいなのだ。
「ちこうよれ、おまえがよくみえるようにな」
おうさまらしくふるまえることが、このうえもなく、とくいだった。


おうじさまは、すわるばしょをさがしたけど、ほしぜんたいが、おうさまのすばらしい、しろいけがわのコートでおおわれていた。たったままでいたし、つかれてもいたのでおもわずあくびがでてしまった。
「わしのまえであくびをするとはぶれいであるぞ」
おうさまはいった。
「あくびをすることをきんずる」


「がまんできないんです」
おうじさまは、すこしはずかしそうにへんじをした。
「ながたびだったし、ねるひまもなかったし・・・」
「おう、それなら、あくびをするように、めいじる。あくびをするものをみたのは、ひさしぶりじゃ。あくびは、わしにとってきょうみぶかいわい。さあ!あくびをするのじゃ!これはめいれいだ」
「そんなことをいわれても・・・もうでません」
いっそうはずかしくなって、おうじさまは、かぼそいこえでこたえた。
「なるほど!なるほど!ならばじゃ、わしはおまえに、あるときはあくびをし、あるときはあくびをしないようにめいれいする」


ここでおうさまは、すこしつまって、ごきげんがわるくなった。なぜなら、おうさまはいつでも、じぶんのめいれいにしたがってもらわなければ、きがすまなかったから。したがわないものは、ゆるせなかった。ここでは、いちばんえらいひとなのだ。でもこころねはいいひとだったから、めいれいは、りくつにかなったものだった。
「もし、わしが、しょうぐんにじゃな、『かもめになってみよ』とめいれいしたとして、しょうぐんがそれにしたがわなかったばあいには、それはしょうぐんのせいではない。わしのせいなのじゃ」
おうさまは、こういっていた。