夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

友に贈る To an Old Mate ヘンリー・ローソン Translated by SoRaJune

友よ!それは昔、風がふきあれていたころ

俺たちの希望も悩みも青臭かったころ

一張羅の皮をぼろぼろになるまで着ていたあの歳月を

一緒に過ごしていくうちに

君の思いやりと正直さに心うたれた。

だから、これからつづる言葉を

君と俺たちの友情にささげよう。

 

君は少し考え込むかもしれない。それも理由がある。

ちょっと苦い後悔もあるかもしれない。

俺が季節の終わりに

何もかも投げ出しちまったから。

それでも俺は君を忘れていないと確かにいえる

そして、君は、友情を利用したあと忘れちまうやつらに傷ついたって、

そいつらと俺とを同じには

絶対にしないと知っている。

 

俺は君を忘れていない。

友よ!俺は君を忘れてなんかいやしない。

俺たちがたどった道は広々と開けていたね。

12月の最後の愉快な日

気が引き締まる一年の最初の日

森の中や切られた木々の間を一緒に歩いた長い距離

プラットフォームや桟橋での短い別れ

 

俺たちがあのころ抱いていた気持ちをありありと思い出す。

そして、昔の星が輝きをます。

俺たちの道は

一本は君の将来へ、もう一本は俺の将来へと分かれたとき

誰かの昔をうたった歌のさびの部分を思い出した。

 

身を切るような冷たい風の中

旱魃(かんばつ)で舞う砂埃(すなぼこり)が目をふさぐ中

疑心暗鬼(ぎしんあんき)の暗闇(くらやみ)に

光明が差し込むのを夢見る中

俺の想いは

君と一緒にキャンプしながら旅して回った

テントの杭(くい)と灰の跡を追いかけた。

 

君はこの詩のページを見て

昔の輝いていた頃を思い出すだろう。

そして、もう会えない友の顔を

時には思い出すだろう。

君に手紙を書くと約束したから

これを君に送ろう。

 

ヘンリー・ローソン

20世紀初頭に活躍したオーストラリアの詩人・作家

ヘンリーは基本的にシドニーに住んでいたのでシティーボーイなのですが、オーストラリアの自然を背景に友情をテーマにした詩を多く書きました。当時は世界的大恐慌の時代で職を求めてほうぼうに行かなければなりませんでした。それでも友情はかわらない。たとえもうあえないとしてもとうたっています。オーストラリアは慢性の水不足で、大陸の中央は砂漠です。からからにかわいているとき、砂漠からの赤茶けたすなぼこりが飛んできてシドニー中が赤く見えたことがあります。

そして雨が降るときは滝のようで、洪水と水不足を繰り返すという厳しい自然環境です。ダムや水道が無いヘンリーの時代ははるかに大変だったとおもいます。