夕焼け色の記憶

翻訳した作品を中心に、オーストラリアから見て思ったことなどをつづっていきたいと思います。シドニー在住

2020-05-15から1日間の記事一覧

グレート・ギャッツビー 第四章-7 怪しい自慢話

グレート・ギャッツビー 第四章-7 「中西部のどこですか?」 さりげなく聞いてみた。 「サンフランシスコです」(サンフランシスコは極西で中西部ではない) 「なるほど」 「家族は皆死んでしまい、僕は大金を相続したんです」 その声は、突然家族を全部亡くし…

グレート・ギャッツビー 第四章-6 壊れた信頼

グレート・ギャッツビー 第四章-6 この一ヶ月の間に何度か話をしたが、残念なことに彼は大した話題は持っていないことがわかった。だから何か意味不明な人物という第一印象は次第に薄れて、オレの中では手の込んだ隣の酒場の主人に過ぎなかった。 そして、気…

グレート・ギャッツビー 第四章-5  ギャッツビー のお誘い

グレート・ギャッツビー 第四章-5 夏になると、ギャッツビーの家にはこんな人たちが集まっていた。 7月下旬のある朝9時、ギャッツビーの豪華な車がデコボコの車道を駆け上がってオレの家の玄関先にたどり着き、3音階のクラクションを鳴り響かせた。オレは彼…

グレート・ギャッツビー 第四章-4 まだまだ変わった客人

グレート・ギャッツビー 第四章-4 ベニー・マクレナハンはいつも違う女の子を4人連れてやってくるのがお決まりだった。彼女たちは身体つきが全く違っていたのに、あまりにも似ているので、前にもそこに来たかのように思えた。彼女たちの名前は忘れてしまった…

グレート・ギャッツビー 第四章-3 ギャッツビー の客人 ウエストエッグ編

グレート・ギャッツビー 第四章-3 ウェストエッグからはポール夫妻、ムレディー夫妻、セシル・ローバック、セシル・ショーエン、州議会議員のグリック、映画審査会を牛耳っていたニュートン・オーキッド、エックハウスト、クライド・コーエン、ドン・S・シ…

グレート・ギャッツビー 第四章-2 客人リスト イーストエッグ編

グレート・ギャッツビー 第四章-2 イーストエッグからの来訪者は以下の通り。チェスター・ベッカー夫妻とリーチ夫妻。イェール大学でオレの知り合いになったバンセンという男。そして去年の夏、メイン州で溺死したウエブスター・シベット博士。ホーンビーム…

グレート・ギャッツビー 第四章-1 ギャッツビー の客人

グレート・ギャッツビー 第四章-1 日曜日の朝、教会の鐘が海岸沿いの村々に鳴り響く中、俗世間の男女がギャッツビーの家に戻り、彼の芝生の上を陽気に歩き回っていた。 「彼は酒の密売人よ」と言う若い娘たちは、ギャッツビーのカクテルと花の間をふらふらし…

グレート・ギャッツビー 第三章-35 恋の予感

グレート・ギャッツビー 第三章-35 太陽に照らされた灰色の目はまっすぐ前を見つめていたのに、関係を発展させようという意思を彼女から感じて、一瞬、彼女を愛しているような気になった。でも、オレは即決する方じゃないし、欲望にはブレーキをかけることに…

グレート・ギャッツビー 第三章-34 ジョーダンの本性暴かれる

グレート・ギャッツビー 第三章-34 ジョーダン・ベイカーは賢くて抜け目のない男を本能的に避けていた。今思えば、一定基準から外れることのない所にいる方が安全だったんだろう。彼女はどうしようもないほど不正直だった。不利になることが堪えられなかった…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-33 ジョーダンの秘密

グレート・ギャッツビー 第三章-33 しばらくはジョーダン・ベイカーを見かけなかったけど、夏も真っ盛りの頃、また出会った。最初は、ゴルフチャンピオンでみんなが知ってる彼女と出歩くことに得意になっていた。それから、また違う気分になった。恋に落ちた…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-32

グレート・ギャッツビー 第三章-32 それから、劇場街に行く5列に並んだタクシーで暗い四十何番街のレーンが埋め尽くされる8時頃には、やりきれない憂鬱を覚えた。停まったタクシーの中に、寄りかかる人影が見え、歌声や、聞こえない冗談で笑っている声が聞こ…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-31

グレート・ギャッツビー 第三章-31 オレはニューヨークが好きになってきた。忙しくて、夜は刺激的で、常に行き交う男や女や車が、落ち着きのない目に与える満足感。五番街を歩くのが気に入って、人混みからイケてる娘を見つけては、しばらく彼女たちの人生に…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-30

グレート・ギャッツビー 第三章-30 全くよく働いた。朝早くプロビティ証券に行くためにニューヨーク下町の白い谷間を急いで横切ると、朝日がオレの影を西に投げた。同僚と、若い債権セールスマンの名前は全部覚えて、彼らと一緒に混んだレストランで小さなポ…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-29

グレート・ギャッツビー 第三章-29 これまで書いてきたことを見返してみると、何週間かずつ離れているこの3日間が、自分に強烈な印象を与えたように見える。だけど実際は逆で、忙しかった夏に起こった単なる普通の出来事にしかすぎなかったし、それからかな…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-28

グレート・ギャッツビー 第三章-28 「試して損はねぇだろ」 男は言った。 最高潮のクラクションは月まで届く勢いで、オレは向きを変えて芝生を横切り家へと急いだ。だけど一回だけ振り返った。ウエハースのような月はギャッツビー邸の上にかかり、笑い声と話…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-27

グレート・ギャッツビー 第三章-27 「初めは停まったってことも分からなくてヨォ」 そこでポーズ。それから、大きく息を吸い込んで肩をいからせ、はっきりした口調で続けた。 「誰か、ガソリンスタンドがどこにあるか知らないかぁ?」 その男より少しは正気…

グレート・ギャッツビー 対訳 第三章-26

グレート・ギャッツビー 第三章-26 ギラギラするヘッドライトに目がくらみ、やかましいクラクションに注意が削がれて、亡霊のような男はぼんやりと立っていたが、ダスターコートの男に気づいた。 「どうしたんだ?」 男は静かに言った。 「ガス欠でもしたの…